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いかにして再ミエリン化(MBPの発現回復)を行うか…… アルツハイマー型認知症の治療ではここがポイントになる

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1964年に行われたアルツハイマー型認知症患者の開頭手術

ミエリンの研究を行ううち、私たちはアメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学の画期的な論文*2を発見しました。同大学では1964年に認知症患者さん(60歳代の女性3名)に開頭手術をほどこし、その脳の一部を採取して電子顕微鏡で観察したのです。

その結果、アミロイドタンパクや異常な神経原線維変化が認められたものの、まだニューロンが正常である部位に脂質の蓄積や脱髄が観察されています。

ミエリンが壊れると、ミエリン膜で絶縁体を構成していた脂質が出てきます。脳内にはその脂質を処理する細胞(マクロファージ、ミクログリア、アストロサイトなど)があり、最終的に脂質の断片として出てきます。

彼らは、「ミエリンの崩壊がいちじるしかった。ニューロンが壊れて出てくるのではなく、どうも脱髄が初発だった」と報告しています。現在、こうしたロボトミーのような手術を行うことはできません。対象は3名ですが、非常に貴重な論文です。

*2 Robert D Terry、Nicholas K Gonatas、Martin Weiss.ULTRASTRUCTURAL STUDIES IN ALZHEIMERS PRESENILE DEMENTIA(1964)

アルツハイマー型認知症で死亡した人と、普通死した人とのミエリンを比較

ミエリンに関しては、1984年のカナダの報告*3もあります。

この報告では、アルツハイマー型認知症で亡くなった3名の患者さんから採取したミエリンサンプルと、普通死した3名のミエリンとを比較しています。いずれも死後4~8時間の方たちばかりで、解析には当時としては画期的なX線解析を用いています。

その結果、「両者のミエリンでは解析パターンに違いがあり、アルツハイマー型認知症で死亡した3名のミエリンは脂質の酸化が進んでいるうえ、不規則で、普通死の場合とは明らかに変化が認められた」と報告しています。

アルツハイマー型認知症で死亡した方で見られたミエリンの不規則性や変化は、ここで述べている脱髄を示唆していると考えられます。
*3 L・S・Chia、J・E・Thompson、M・ ⒜ ・Moscarello.Biochemical et Biophysica Acta(1983)

脱髄したまま終わる再ミエリン化不全には、「2つの原因」がある

健常人の場合、脱髄が起きてもミエリンは再生されます。しかし、再ミエリン化がうまく行われず、脱髄したまま終わるケース(再ミエリン化不全)があります。脱髄したまま終わる原因として、次の2つのことが考えられます。

①OPCがない(あるいはOPCの絶対量が少ない)

②OPCはあるが、分化・成熟できない(ミエリン形成担当細胞であるオリゴデンドロサイトになれない)

 オリゴデンドロサイトの発生はまだ分からないことも多いのですが、その元になるOPCは神経幹細胞から脳の側脳室付近で誕生します。その後、OPCの分化・成熟を経て、オリゴデンドロサイトとなります。

何らかの理由で、前記の①または②の状態が続くと脱髄を引き起こし、ミエリン形成不全に陥ります。やがてはニューロンの機能の低下、さらにはニューロン死を招きます。

この①と②の両方にかかわっているのが、MBPです。再ミエリン化では、MBPの発現回復が非常に重要なポイントになります。

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